決 議
2006年の第164回通常国会において健康保険法等の一部を改正する法律が成立し、2008年4月から後期高齢者医療制度がスタートした。
後期高齢者医療制度には高齢者の負担増や給付制限等、様々な問題点があるが、その根幹を成すものは「後期高齢者の心身の特性等にふさわしい医療」という名のもとにまことしやかな、しかしながら誠に曖昧な表現で医療費削減という大命題によって後期高齢者の医療を75歳を境にして明らかに差をつけようとするものである。
医療の連続性、継続性を考えるとき、これまでの我が国の世界に冠たる国民皆保険制度の根幹を揺るがすものであるといっても過言ではない。
今回の後期高齢者医療制度の特徴を列記すると、後期高齢者への新たな負担増、これまで家族に扶養されていて保険料負担がゼロだった人に対しても保険料の負担が強制的に義務付けられ、年金から天引きされる。保険料、財源の問題もさることながら、本質的な問題は、1患者につき、1主病、1主治医という発想である。高齢者の多くは、複数の疾患を併せ持っており、決して主病が1つであることに限定されるべきではない。患者が1人の主治医しか持てないとなると、必要なときに他の医療機関への受診ができなくなりフリーアクセスの制限になる。
現在のところは出来高算定が可能であり、フリーアクセスを阻害しないと厚生労働省は言っているが、今まで色々な事項がなし崩し的に進められてきたごとく、将来、出来高払いが認められなくなり、後期高齢者診療料での包括制に一本化されるようなことになれば、75歳になったと同時に高齢者の医療は非常に制限されたものとなり、フリーアクセスも阻害される。即ち医療費が定額制となり、上限が設定され、余裕のある人のみがそれ以上のサービスが受けられるといった医療格差が生じ、それが必然的に混合診療への道につながっていくことになる。
また、1主治医制という発想は既に中医協での総合医制につながっているが、総合医構想は開業医形態に大きな変化をうながし、結果的に急速な地域医療の更なる崩壊を惹起する可能性が高い。また、これは人頭払い制につながるものであり医療の質の低下が強く懸念される。
更に「高齢者の`心身の特性等にふさわしい医療」というやわらかいもっともらしい表現ではあるが「寿命は長くないのだからそれなりの医療を受ければ良い」という考え方が根底にあり、それが後期高齢者終末期相談支援料の考え方であり、敬老精神を無視した誠に失礼千万な哲学のない官僚的な発想である。
以上のように、今回の後期高齢者医療制度について、保険料、財源の問題についての見直しを行うとともに、1患者1主病1主治医という発想を破棄し、将来にわたって、75才を境に受けられる医療の内容が制限され、フリーアクセスが阻害されることがないようにしなければならない。
一方、本年4月から始まった診療報酬改定において創設された、外来管理加算の5分間要件は、医療現場の混乱を招き、患者への不信を抱かせる問題となっている。
また、診療関連死の死因究明制度創設に向けた厚生労働省の第3次試案に関しても多くの心配な問題を有している。
以上の諸課題に対し、われわれは政府・厚生労働省をはじめ与・野党を問わず各政党ならびに関係諸団体に対し、これら事項の解決にむけて最善の努力をはらわれるよう求めていくため、以下のことを決議する。
記
一、後期高齢者医療制度を即時廃止せよ
一、後期高齢者診療料を早急に撤廃せよ
一、外来管理加算の5分間要件を早急に撤廃せよ
一、診療関連死の死因究明制度については再検討せよ
一、社会保障費の年間2200億円の削減を来年度から撤回せよ
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