かかとにハレやイタミを生じることがあります。多くは、かかとの柔らかい部分に痛みがあり、踵部ないしは踵部の中央よりわずか内側に圧痛を認めます。この部に限局する苦痛であつて、その近くの骨や軟部組織に圧痛がない場合に踵部痛症候群と呼び、はっきりした原因は不明です。しかし、原因と考えられるものには、神経の絞扼、踵骨の疲労骨折、そしてもっとも支持される説として足底筋膜のかかとに付いている部分の炎症説があります。踵部痛の原因としてはこの症候群がもっとも多く、よくわかっていない病態です。その他の原因としては
(1)踵骨後滑液包炎
アキレス腱とかかとの骨の間にある滑液包という袋に炎症が起こり腱の遠位部に腫れを生じます。
(2)アキレス腱周囲炎
マラソンをやっているが、最近、走るとアキレス腱が痛い。腱の周囲<パラテノン>が炎症を起こし、腫脹、浮腫、肥厚を生じ、圧痛を伴う。
(3)パンプ靴のこぶ<パンプバンプ>
踵の低い靴<きついパンプス>がかかとの骨の突出部に当たり痛みを生じます。圧痛は突出部に限局し、骨性のものではなく、皮膚の腫瘤である。
(4)踵骨骨端症<シェーバー病>
骨格が未熟な思春期の運動選手のかかと尖端の痛みとして生じます。
(5)踵骨棘;足底筋膜炎
踵骨の足底面は足底筋膜の付着部であり、骨性隆起を生じることがあります。この隆起は必ずしも痛みの原因とはなりませんが、足底筋膜は足のアーチを形成しています。足のゆびを伸ばすことによってこの筋膜は緊張します。この部分に炎症が起こって痛みを生じます。
(6)足底線維腫症
筋膜炎とは異なった病態で、直径2cm以下の圧痛を伴った多発性の結節の存在が特徴的です。
(7)踵骨疲労骨折
どの年齢層にも起こりうるもので、必ずしも過度な荷重が繰り返しかからなくても生じ、骨粗鬆症の傾向がある人なら日常生活でも発生することがあります。
(8)距骨下関節炎
かかとの踵骨とその上にある距骨の間の関節炎で足首の痛みを訴える場合が多いものです。
(9)踵脂肪体萎縮
踵が立っているだけでもジンジン痛い。特に硬い床の上を歩くとひどい。踵の脂肪体に張りがなく、移動性に富み、容易に踵骨を触れる。
このほかにも化膿性疾患、神経障害による足根管症候群、腫瘍、踵骨骨折、外傷などによる変形もあり、専門医の診断が必要になります。
タケダヤ整形外科 竹田谷 寛
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