(1)割り箸はもったいない? 田中淳夫 ちくま新書
一時割り箸は森林破壊の原因になる、と言う意見が出され、割り箸をやめる運動が盛んになり、それに変えて自分の塗り箸や、プラスチックの箸を使う人が増えた事がありました。筆者は木を伐る事が日本の森を守る、と言うことを述べています。日本の人工林は苗木を密に植えて、成長するたびに何本かの木を間引いていきます。この間伐が残った木をより良く育て、間伐材を利用するようになります。最終的に残った大木が高価で取引されますが、それまでに間伐材を色々と利用する事で収入が得られ、最初の植え付けや下刈りの経費が全てまかなえる事になっています。
しかしこの手入れが十分に出来ていないと、山の土壌に質も落ちて保水力が悪くなり、水害の原因にもなります。この様な山の事を「緑の砂漠」と呼ぶのだそうです。筆者によると、間伐材や、大きな材木の端材を用いて作る割り箸は、決して環境を破壊するものではなく、林業を有効に行っている結果生まれたもので、これを通して日本の森林を、より健全な状態に保っていく事が必要だと述べています。
(2)暗殺の日本史 岡林秀明ら 宝島社文庫
日本史を読んでいると、特に古代には暗殺の記録が沢山あります。これ等を、その人が死んで一番恩恵をこうむった人は誰かを考証して、その真犯人を考え、時代背景を説明している本です。教科書には載っていない、闇の部分に焦点を当てています。
それにしても、古代には沢山の暗殺がありました。人が死ぬ、ということが日常茶飯事だったのでしょうか。現代は事故などがありますが、古代は疫病等であっという間に沢山の人が亡くなったのでしょう。また身近に死体があったのでしょう。これ等から来世とか、死後の世界と言う概念が生まれてきたのでしょうが、そういうことを経験しなくなった現代人は、益々それらの概念から離れていきます。
(3)国家に隷従せず 斎藤貴男 ちくま文庫
多くの国民は、自分たちが支配され、支配者のために死んでいく階層である、と言うことを実感していません。小泉が選挙応援に来たと言って喜んで聞きに行き、写真を撮ったり歓声を上げて喜んでいます。1%の人たちが99%の富を独占し、99%の人達が1%の富を分け合う、今の世の中を構造改革という耳障りの良い言葉で作り上げてきた小泉や竹中、またその中でうまく立ち回り私腹を肥やした、オリックスの宮内。この様な事実を報道せず、ガス抜きをし、支配者に良いように上手く大衆を導いている「朝ズバ」に代表されるマスコミ。この様な事実を私たちは、もっと真剣に認識すべきでしょう。
注意深く見て行くと、みのもんたの言葉の端々に、現在のファシズム政権に視聴者を誘導していく意識が見られます。そういう視点からあの番組をご覧になると、ここまで私たちは管理、支配されていると言う事がお判りになると思います。そう言う認識を持たしてくれる本でした。
(4)江戸の妖怪事件簿 田中聡 集英社新書
江戸時代は様々な妖しいものたちが出没し、人々はそれを恐れたり、見物に出かけたりしました。また識字力が優れていたので、それらの記録が多く書き残されています。いかにも日本人だなと思わせるのは、幽霊が出ると言う噂で人が集まる所には、すぐに食べ物を売る店等が出たことです。今の私達が聞けば、一笑に付すような出来事も、その当時の人たちは、その時代にある知識でどうにか説明しようとしていました。幽霊はいないだろうと考える人も多かったようですが、疾病などは狐や狸のような動物が悪さをしている、と考える事が多いようでした。
まあそんな事があったんだなと、納得させる本です。
(5)遺伝子が解く 女の唇のひみつ 竹内久美子 文春文庫
例によって動物行動学を、遺伝子の切り口から解いていった本です。筆者の持っている好奇心を、読者からの質問に答える、という立場で追求しています。その追求していく道に、私たちは一緒に迷い込み、歩いていきます。実際このように、遺伝子だけで森羅万象を説明できるか、という意見もあるでしょうが、しかしまあ見事に説明されれば、そうだったのか、と納得してしまいます。以前も書いたかと思いますが、気軽に読めて、アカデミックな所でも納得できて、これから先に色々役立ちそうな本です。この人の本はお奨めです。
(6)コテコテ論序説 上田賢一 新潮新書
なんばはニッポンの右脳である、という副題にあるように、論理的なキタに対して、感覚的、動物的なミナミを取り上げています。歴史を紹介し、そこから発展した吉本興業、南海電車、さらに新しい展開を見せる、ナンバパークス、それらからこれからのニッポンの進むべき姿を考察しています。
私は月に二週間位は用事で梅田に行きますが、この本で述べてあるような、空気の違いを感じます。私に合っているのはやはりミナミで、デパートにしても、阪急より心斎橋大丸でしょうか。有名な料理店の支店は梅田に沢山ありますが、あえて右脳の中心、ミナミに店を持っている香港の有名店、福臨門酒家は流石だと感心しています。全然主題から離れますが、この店の昼の香港飲茶ランチは絶対のお奨めです。是非一度御賞味の程を。
(7)リサイクル幻想 武田邦彦 文春新書
今私たちはリサイクル、つまり循環型の社会を目指しています。ごみの分別、資源ごみや紙、ぼろ布をだす、等を積極的に行っています。しかし例えばペットボトルをリサイクルに出すと、それを処理する石油の消費量は4倍になります。また各自治体単位で行っているリサイクルを、集約すれば効率は良くなりますが、それに伴う輸送費などが掛かり、結局は割高になってしまいます。紙の問題でも、紙になる木材は所謂先進国で、計画的に植林されたものがほとんどで、むしろこれはだぶつき気味。熱帯雨林の破壊などで問題になっているのは、焼き畑農業などによるものが殆ど、ということです。このように私達がリサイクルと思っている事、又は思わせられている事は、実際は何等リサイクルになっておらず、むしろ環境破壊になっているという事が述べられています。
一番効率的なのは、人口30万人に1つくらいの高熱の、発電機能を持った焼却場を作る事、燃え残った重金属をストックしておく事だ、と述べられています。
先日の中越沖地震で、原子力発電所の火災が問題になりました。ニュースによると今、日本の全原子力発電所を操業停止にすると、約30%発電量が落ちるそうです。しかしちょっと考えれば、私達が今の生活の電気に対する依存を、三分の一減らせば原子力発電を使わずに済むわけです。それ位出来ると思いませんか。昔、夜はもっと暗かったし、片方では非常な熱源になるクーラーなどなかったし。子孫に原子力発電のようなものを残すより、風力発電、太陽光発電を残し、より良い環境で生きていってもらえるようにする事が、私たちの責務ではないでしょうか。
(8)報道されない重大事 斎藤貴男 ちくま文庫
最近はまっている筆者の本です。今の日本は、アメリカの新自由主義(小泉、竹中、宮内の進めて来た路線)に追従しています。それを進めてきた人たちは、竹中、宮内といった、昔で言えばなりあがりか、小泉のような、政治家の二世三世といった連中です。彼らの利益を守る為、庶民は戦争などに参加させられます。この人たちは戦争になっても絶対死にません。後方の安全な所にいて、彼らの利益を守る為に、私達に突撃して死ね、と命令するだけです。それが彼らにとっての「美しい国」でしょう。彼ら、又は安倍晋三は、国と国家という言葉の区別が分かっていないか、上手く使い分け、それに庶民がだまされるという構図です。そもそも、私たち個人個人を守る為に国家があるはずです。国家の権力者を守るために、個人が存在しているのでは有りません。昨今言われている、財政が逼迫している原因は、彼ら権力者のおじいちゃん、お父さんが、私たちのほうを向いて、真摯に政治を行ってこなかったからでしょう。財政改革、三位一体の改革、などと耳ざわりの良い言葉を使って政治を行い、結局は大企業のみが空前の利益を得、庶民と地方が貧困にあえいでいます。
彼らの、または大企業の利益を守る為、北朝鮮の脅威をことさら囃し立て、拉致被害者問題や対テロ問題も絡めて軍事大国への正当性、集団的自衛権も当然といった雰囲気を作り出していきます。それをチェックすべき国会議員のバカさ加減、(先般の国会の強行採決を思い出してください。立法府としての働きなど全く放棄しています。我が選挙区選出の、谷畑大先生も、ピエロの様に恥ずかしげもなく、ご立派に立ち振る舞っておられました。)またそれを報道せず、権力に擦り寄り、正論を吐こうともしない、報道機関。(産経、読売など初めから話になりませんが)これ等に対して筆者は怒りを持って糾弾しています。
私たちは、祖父の世代の人達に、なぜあんな愚かな時代を過ごし、その結果として日本人のみならず、近隣の諸国民に対し多大な災禍をもたらした、対中国や太平洋戦争を始めたのだ、と問いかけてきました。今度は私達が、孫の世代に、私たちの愚かさを指摘される時代が、今進行しています。
(9)近江から日本史を読み直す 今谷明 講談社現代新書
そう言えば、日本史で近江の名前は良く出てきます。大津京、紫香楽宮、比叡山、信長の焼き討ち、安土城、関が原、中江藤樹、井伊直弼、近江商人。あまりこれまで、滋賀県という切り口から歴史を見てきませんでしたが、このように並べると、その面白さを再確認します。京都、奈良、大阪の近くにありながら、こういっては失礼ですがちょっとマイナーな感じの県ですが、やはり畿内にあるだけ、歴史上重要なものが沢山あります。この本はそれらへの観光案内、歴史入門書として最適だと思います。これを片手に、滋賀を歩いてみるのも良いでしょう。
白 江 医 院 白江 淳郎
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