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今年度の医療制度改定について(その2)  その1はこちら

☆外来管理加算について
 従来入院以外の患者さんに、計画的な医学管理を行った場合、再診料に加えて外来管理加算を算定していました。どうしても都合が悪くて来院できず投薬のみになった時、予定の検査で来院された時でも、その投薬や検査が計画的な医学管理に基づくものであれば、算定できていたわけです。
 ところが今回、外来管理加算を算定するには「おおむね5分間の診察が必要」、と言う時間の規定が入ってきました。この5分と言う時間が、何を根拠に出てきたのかがはっきりしません。どうも昔医療を批判するのによく使われた「3時間待って、3分間治療」では拙いだろう、と言うくらいの発想から生まれたらしいのです。
 これをマスコミが面白おかしく伝えたものですから、非常な混乱が起こりました。先日も医師会に、「受診する時はストップウォッチを持っていって、一秒でも短ければ外来管理加算は払わない」と言う電話がかかって来ました。しかし根本的な精神は、「充分に診察し、患者さんに説明して安心してもらいなさい」ということですので、どうぞお間違えの無い様、お願いします。
 皆さんが受診される時、各々の医療機関ではその医療機関独特の、患者さんの流れがあるはずです。
 受付で病状を話し、それに応じて尿の検査や熱を測り、血圧を看護師さんが測定し、といわば予診を済ませておいてから、医師が診察し、病気の状態を説明し、これからの治療方針を話します。詳しい検査が必要ならば、看護師さんが食事の注意や検査の内容等の説明をしてくれます。診療が終わっても受付で、お薬の確認や、支払の明細書などを発行します。この様な一連の医療行為が、外来管理加算算定のもとになっていると考えています。
 この様な流れがあるのに、医師の前にいる時間だけを取って、「おおむね5分間」がなければ外来管理加算を算定できない、と決め付けることは良いのでしょうか。
 私達が心配する事は他にもあります。診察を受けないで、お薬だけ希望される患者さんが増えるのではないかと言う事です。
 理屈では診療を受けていない方は、外来管理加算を支払う必要は無く、3割負担の人で約160円負担が少なくなります。しかし、お薬を処方した責任は私達医師にあるわけですから、診療を受けずに何か急変が起こっても、結局は私達の責任問題となります。投薬を受ける事は、診療を受ける事が前提です。どうぞご理解下さい。

(3)今回の医療制度改訂の狙いは何だったのか
 今回の医療制度改革ほど、国の「医療費抑制の為なら国民が死んでもかまわない」と言う態度が露骨に出た改革は無かったでしょう。
 私達医師が一番情けなく思うのは、その様な国の方針が二年前から明らかであったにもかかわらず、日本医師会がそれに対して何の反論も反対行動もせず、国、厚生労働省に対して尻尾を振り続けていた事です。
 私達は国民の皆さんの健康、福祉の最前線に立って、皆さんの方に常に顔を向け一緒に歩んで来た筈です。小泉首相が混合診療解禁をぶち上げた時にはそれに反対し、大阪城ホールに集まった2万人以上の府民の方々と一緒になり、これを葬り去りました。その様な事を日本医師会、大阪府医師会は今回行ったでしょうか。
 執行部の地位や権益を守る為、国民、末端の医師会員を裏切ったとしか思えません。

 「国民衛生の動向」と言う報告書によると、昭和60年度の国民医療費は約16兆円、平成15年度のそれは約31.5兆円だそうです。それならば、この間に私達医師の収入が倍増したかと言うと、むしろ半減しているのです。それならこの医療費はどこに消えたのでしょう。製薬メーカー、医療機器メーカー、柔道整体師などにかなり流れていっていると考えられています。国はどういう訳かこのあたりのデータは公表しません。しかし見逃してはならない事実です。これ等の団体は多額の政治献金を収めたり、選挙では恥ずかしげも無く自民党に協力する組織です。
 厚生労働省は、以前は「国民医療費増加は医師が増えすぎたからだ」と言うような事をいい、私達医師を医療費増加の元凶の様に言ってきました。しかし、医師不足が原因と思われる医療崩壊が言われだすと、今度は高齢者が犯人だ、と言うように論調を変え、後期高齢者医療を強引に推し進めています。これでいいのでしょうか。
 財務省を中心として、医療費抑制政策はこれからも続くでしょう。当然そうなれば、せっかく葬り去った、小泉や竹中の唱える「混合診療」という言葉ががまた現れるかもしれません。裕福な人が良い医療を受けられ、一般の人は劣悪な医療しか受けられないといった、今のアメリカの医療制度を日本で許してはなりません。
 健康増進法という法律があります。これが今回の特定健診の理論的根拠になっているのですが、この様な法律は、世界史を見る限り、現代日本とナチス ドイツしか持っていません。ナチス ドイツでは、ハンディ キャップを持つ人たちが強制収用所に送られ、抹殺されていった事は皆さんご存知でしょう。そこまで露骨ではないにせよ、「メタボリック症候群」と言うちょっと響きの良い?言葉に騙されて、疾患を持つ社会的弱者を差別するような事は有ってはならないでしょう。
 私達は日本医師会、大阪府医師会が容認している、国家の医療政策に大きな声で「NO」を叫びたいと思います。
 国民の皆さんは是非、来るべき選挙では冷静に判断され、耳触りの良い言葉や、ワンフレーズの空虚な絶叫ではなく、国民のための真の医療、福祉を実現してくれる政党、候補者に投票してください。それが現在の誤った医療政策をただし、子供達、孫達を不幸にしない最善の選択です。

白 江 医 院 白江 淳郎


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